2014年3月30日日曜日

スギ花粉の季節がくると、麻酔なしで舌の生検を取られた隣町のA先生を思い出します。

以前何かの本で読んだのですが、腕の良い医師ほど時々残酷な事を考えるそうです。残酷なこととは、来院する患者で癌など滅多にお目にかかれない奇病難病の患者を診察したいという欲求に駆られるそうです。こうした難しい病気は患者の生命にかかわり当然遭遇しない方が患者には良いわけですが、診察する医師としては大きな好奇心の刺激となり難病の来院を残酷にも期待するのが腕の良い医師に多い身勝手な習性だそうです。
今から2年前の2月、隣町の耳鼻科医A先生に舌の痛みがひどくなったと面会した時、目覚めたばかりのように目を輝かせてうれしそうに真剣に症状を聴いていただきました。曰く「今日は朝から最後の患者さんあなたまで20人以上全部花粉症の患者でした。同じことの説明と同じ薬の処方で正直ウンザリしていました。ホウホウ食事時に舌が痛いって、どうかよく見せてください」本当に目を輝かせてガーゼで舌をつまんで下さりました。そうして舌の下裏の最奥の大学病院で舌癌の専門医に最も発見が困難といわせた驚いた私の小さい舌癌による潰瘍を発見して下さったのです。
発見できたのはA先生の技量の高さが第一でしょうが、朝から何十人も同じ症状の患者を診察して変った病気の患者を待ち望んで年に一回あるかどうかの舌癌を探すというA先生としての興味をかきたてる事情もあったのでしょう。考えれば考えるほど腕の良い医師と同じことの繰り返しに飽き飽きしていた、口腔内の命にかかわる大病をたまには発見して患者の命を救いたい欲求が一致した私にとっての幸運でした。潰瘍を見つけられなければ異常なしで帰されます。そんなわけで手術から2年経過しました。あと2週間ほどで舌癌再発転移の2年後の検査のためCTスキャンを受けます。無事パスすれば診察が2ヶ月に一回になるかもしれません。

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