2008年4月29日火曜日

ビール樽型の備前焼急須が深みのあるお茶を作る秘密2


ほかの陶器の事は知りませんが、備前焼の手触りは表面に小さい砂をまぶしたようにざらついているのが多い。まさに備前焼の触感は土の質感たっぷりです。握力が弱ったお年寄りには落としにくく、手のひらに適度の刺激が脳に伝わって忘れがたい、手になじむ食器となるのでしょう。使い込めば使い込むほど愛着がわくと言われる理由のひとつかもしれません。
ビール樽型の備前焼急須は手に持った触感は、ほかの備前焼とは違って磁器や常滑焼のようにつるつるしています。最初のを落として割ったのもつるつるで手からの刺激が少なく慣れにより注意をそらしてしまったのかもしれません。柄の部分がもう少し末広がりになっていればと急須の構造のせいにしたくなりましたが、円筒形でもっと滑りやすい急須もあります。今一つしかない大切な備前焼き急須を手にしているんだという緊張感をつかの間、忘れたのでしょう。肌の色は赤茶をベースに黄色いゴマ模様があり、おおよそ表面は備前焼の特徴を備えています。
もう捨ててしまったが割れたビール樽型の備前焼急須の破片の断面にはまったく陶器らしさがありませんでした。別の備前焼の割れた断面にはコンクリートの断面のようなものがあります。粒子の粗さ軟らかさが粘土らしさを表し、きめの粗い粘土の粒と粒の間に空気を挟んだような温かみのようなものは、ビール樽型の備前焼急須では感じられませんでした。その断面は結晶の粒子が硬く結合した磁器の断面でした。ところどころ角度を変えるときらりと光ったようでした。
写真左は触るとざらざらします。
こうした陶器の質感は、硬いもので弱く叩くと跳ね返ってくる音に現れます。ぼこぼこ、ちんちんがそれぞれ陶器、磁器の音の感じです。低音が陶器、高音が磁器で硬さの感じが出ます。表面がざらついた備前焼がボソボソボコボコ、表面がつるつるのビール樽型の備前焼急須がちんちんと高い音になります。磁器のコーヒーカップを爪で弾くと余韻を引いたチィーンと音がしますがそこまではいきません。以上より同じような陶器内部の質感を求めるならライターの金属部でコンコンと叩いてみればと考えました。しかし大切な売り物として展示している商品にそれはできません。本当に叩いて高い音が出る備前焼急須で入れると生の茶の木の新芽を噛んだような湯茶ができるという保障もありません。ここまで考えてビール樽型の備前焼急須の機能を解明するのはあきらめました。要は深みのあるお茶を飲めればいいわけで伊部駅近くの販売店も見つけております。ビール樽型の備前焼急須は買い置きの在庫もあるし供給に何の不安もありません。物事を深く考えるのが苦手な頭を苦しめるのはもうやめようと考えないようにした。
それから半年後、洗った急須を乾かしている時、ついに謎を解明できたのです。

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